死を友にした男

Posted by michikosayura on   0 comments

きのうであの前震から一年、明日で未曽有の本震から一年となる。
とても、とても皮肉なことに、ちょうど一年経ったこの時期にあることを痛感した。
それは、もう熊本地震は県外ではほとんど忘れられているということ。
テレビでは熊本地震の特集コーナーや特番も放送されたけれど、ネットの投稿を見ると、熊本地震から一年ということを意識している人はほぼ熊本県民だけだ。
一年前にボランティアや慰問で熊本を訪れた有名人もほとんどの人がコメントすらしていない。
もちろん中には熊本には縁もゆかりも無いのに、熱心に支援を続けてくださっている方々もいる。
こういう方々がいるから熊本の人たちも前を向いてがんばろうという気になる。
仮設住宅の入居者にお会いすると、少し前よりも元気を無くして体調不良に陥っている人が少なくない。
熊本のほとんどの人たちが当たり前の生活を取り戻している中、「まだ立ち直ってないの?」と思われるのを恐れて、自分の辛さを誰とも分かち合えずに胸にとどめている被災者は増える一方だ。
最初の一年は頑張れた。
「大変なのはみんな一緒だ」と思えたから。
頑張れば、元の生活が戻ってくるはずだという希望も描けた。
ところが現実は、復興は歯がゆいほどに遅々として進まない。
未だ地震被害から立ち直っていない人たち向けて、本当の支援が必要なのは、世間が地震を忘れてしまおうとしているこれからだ。
そんな人たちが「つらい」といつでも言える社会の空気を作ることは大切だ。

数日前、ロバート・ゼメキス監督の「ザ・ウォーク」という映画を見た。
これは伝説の大道芸人フィリップ・プティ(今もご健在)の実話を描いた作品。
ちょっと前の映画だけど、この作品もフィリップさんのことも今回はじめて知った。
このフィリップさん、なんと建設途中のワールドトレードセンター「ツインタワー」の間にロープを張って「綱渡りテロ」を成功させた人。
しかも命綱無しでー!!(ゾゾゾ~)
17歳の時に歯医者の待合室で偶然にワールドトレードセンター建設の新聞記事を見たことで、なぜかこの少年は「この二本のビルにロープをかけて綱渡りする!」という夢に憑りつかれてしまう。
(なんでだー!?)
構想と準備に6年という年月をかけ、共犯者を着々と増やし、一歩間違うと犯罪行為でしかないこの計画を、フィリップはついに成功させる。
映画では事実に基づいてこの綱渡りの一部始終を再現している。
ほんで・・・一回渡り終えるに飽き足らず、フィリップさんツインタワーを8回も渡ったのだ。
(・・・命綱無しで)
その上、ロープの上に寝そべってみたり、渡ってる途中で突然感謝の念に打たれてタワーとロープに膝まづいてお辞儀したり。
(いやー!死ぬって!いいからもうヤメテー!!)
渡る前には普通の人間と同様に「これは絶対ムリ!怖い!」と思っていたフィリップさんに、いったいどんな心境の変化があったのかすごく興味が沸いて、映画を見終わったあとにネットでサーチした。
その時の心境をフィリップさんはこんな言葉で語っていました。
「未知」が与える力 映画『ザ・ウォーク』で語られなかったフィリップ・プティ狂気のおとぎ話

「地下鉄の駅から地上に出て、タワーを見上げた瞬間、自分の夢が一瞬で崩れ去るのがわかりました。無理だ。無理だ。無理だ。
明らかに無理だと思いました。あの間を歩くのはもちろんですが、さらに大量の道具を見つからないように運んで、数時間のうちにワイヤーを張るなんて、明らかに人間の成せる技じゃない。
…でも、私の中の何かが、私を前へ押し出したのです。」

「…なんて美しい死なんだろう。情熱の中で死を遂げられるなんて。」
綱渡りの真実。それは、死によって形作られているという事です。」

「突如として 空気の密度が変わる。
マンハッタンの無限の広がりが止まる。
街のざわめきは スコールとなり
その激しさも 私はもう感じない。

棒を持ち上げ へりに近づく。
足を踏み出し 左足をケーブルに。
ビルの側面にかけた右足に
全身の体重がかかる。
左足にすこし 体重を移そうか
右足の負荷が減れば すんなりワイヤーに乗せられる。

こちら側には 私が積み上げてきた人生の山。
向こう側には 雲に満ちた宇宙。
“無”と思える未知の世界。

足元には ノースタワーへ続く道。
55メートルのワイヤーロープ。
一直線に伸び たわみ 揺れ 震え 回る。
氷のようであり
3トンの張力で 破裂しそうに
私を飲み込みそうに。

内なるうめきが 私を責め立てる。
“逃げ出したい”という心からの声。
でも もう手遅れなんだ。
ワイヤーが待っている。

右足は しっかりとケーブルにかかった。」

読みながら泣いてしまった。
なんでだろう?
そこには自分と世界への(それから多分神への)絶対に揺るがない信頼がある。
そのことに泣けた。

「己自身を力付ければ、他人をも力付けられます。
どうか忘れないで。その両腕に、羽を生やして。そして、飛び立つのです。

この世界を違った角度で眺めてください。
もし山が見えたとしても…覚えておいて。
山は動かせるのだという事を。」

このフィリップさんのお話しはこの動画で見れます。






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